今やクレジットカードのない生活は考えられない程、日常生活に浸透しています。
特に大型家電などの高額商品やインターネットでの買い物だけでなく、光熱費や携帯電話の代金もクレジットカードを利用している人は多いです。
しかし、一方でリボ払いや分割払いによって残高が増えすぎてしまい、債務整理を余儀なくされるケースも散見されます。
この記事では、債務整理をすることでクレジットカードにはどのような影響が出るのか、などを詳しく解説していきます。
- 債務整理は、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4つがある
- 債務整理をするとクレジットカード強制解約となる
- 利用していないクレジットカードも利用停止、強制解約となることが殆ど
- 債務整理をすると個人信用情報機関に事故として登録される
- 事故登録されると情報が消えるまでクレジットカードは新たに作れない
- 事故情報が消えても、クレジットカードを新たに作れないケースがある
4つの債務整理
債務整理とは、借金の増加や収入を始め生活環境の変化により契約通りの返済ができなくなった場合、合法的に借金の期限の延長や減額、免除してもらう手続きのことです。
債務整理には「任意整理」、「特定調停」、「個人再生」、「自己破産」の4つがあり、それぞれ手続きの流れやその後の支払いなどに違いがあります。
では、それぞれ詳しく解説していきます。
任意整理
任意整理とは、裁判所を通さずに当事者間で話し合いを行い、借金を減額する方法です。
全ての借金や債務を対象とする必要はなく、自分で任意整理の対象とする借金・債務を選択できます。
例えば、カーローンは債務整理すると車を取り上げられるため対象から外し、これまで通り返済を続けていくといったことができます。
債権者に対し自分で交渉することもできますが、交渉に難航することが多いです。
従って、一般的には弁護士や司法書士に1社当たり3~5万円の報酬を支払い、依頼します。
債務整理に入った時点で取り立ては当面ストップされるため、既に延滞して督促の電話等で精神的に追い込まれることはなくなります。
任意整理では以下の利息等は減免されますが、借入元金は支払わなければなりません。
- 通常返済を続けていくと支払う予定であった利息
- 最終返済日から任意整理が合意する和解日までの経過利息
- 返済を滞納することで発生する遅延損害金
また、任意整理ができる条件として、以下が挙げられます。
- 3~5年分割払いで完済できるだけの安定した収入がある事
- 完済まで返済の意思がある事
3~5年で完済できる目処が立たない場合、債権者の合意が得られない可能性が高くなります。
特定調停
特定調停とは、裁判所が債権者、債務者の間に入り、話し合いで借金を減額する方法ですが、対象とする借金、債務を選択できるなど任意整理と共通点が多くあります。
特定調停は、債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に特定調停を申し立てることから始まります。
任意整理の場合、弁護士や司法書士に依頼しなければ交渉自体難航しますが、特定調停では裁判官を始め調停委員が間に入るため、法律に疎い個人でも手続きできます。
費用も任意整理で弁護士や司法書士に依頼する場合と比べかなり安い金額です。
一方で、任意整理での和解で取り交わす覚書等に法的効力はありませんが、特定調停で作成される調停調書は判決と同じ効力を持っているため、万が一和解後に返済金を支払わず債務不履行となった場合、貸金業者は給与や預金口座を差し押さえるなど強制執行ができます。
また、特定調停では過払い金は考慮されず、別途交渉するか訴訟する必要があります。
個人再生
個人再生は、任意整理や特定調停と違い全ての借金を対象に大幅に減額する方法です。
減額幅は5分の1~10分の1となるため、手続き後の支払は任意整理の場合よりも少なくなることもあります。
個人再生では、住宅や車など生活に必要最低限の資産は残した上で手続きができます。
個人再生ができる人は以下の通りです。
- 安定かつ継続した収入がある事
- 借入総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下である事
依頼した弁護士が、裁判所に個人再生の申し立てを行うことで手続きが始まります。
その後、選任された個人再生委員との面談や債権者の事情聴取を経て、提出した再生計画の認可・不認可が決定します。
認可が下りると2週間後に官報に掲載され、さらに2週間後に個人再生が確定するため、準備期間も含めて半年~1年程度かかります。
また、費用も弁護士に依頼する費用も含めて約70万円程度かかる点がデメリットと言えます。
自己破産
自己破産とは、税金や養育費など一部の非免責債務を除いて全ての債務が免除される債務整理です。
一度は耳にしたことある人も多いでしょう。
自己破産は借金を単純に免除する手続きではなく、所有している財産等を処分しても返済できない借金を免除する手続きであるため、煩雑で時間もかかります。
当然、弁護士に依頼することになりますが、費用も数十万~100万円程度かかることがあります。
手続きの流れは依頼した弁護士が、破産申立・免責申立を行い、裁判官との面談を経て免責決定、自己破産が確定します。
官報に掲載される点は個人再生同様ですが、自己破産すると失効する資格などもあるため職業によっては、自己破産したくてもできないケースがあります。
また、借金の理由によっては自己破産できない点も個人再生と違います。
債務整理をすると個人信用情報機関に事故情報として登録される
クレジットカード会社や消費者金融、銀行などの金融機関は、融資の審査で他社借入状況の確認のため個人信用情報機関に照会をかけます。
個人信用情報機関では、加盟している金融機関の借り入れの契約内容や支払い履歴などが登録されており、(株)シー・アイ・シー(CIC)、日本信用情報機構(株)(JICC)、全国銀行個人信用情報センターの3社があります。
また、個人信用情報機関の3社は、「CRIN」や「FINE」と言われるそれぞれの登録情報を共有するネットワークでつながっているため、加盟していない個人信用情報機関の情報もある程度確認できるようになっています。
債務整理をすると、この個人信用情報機関で異動情報として登録されます。
異動情報として登録される内容は、個人信用情報機関によって違いますが、主に以下の内容となっています。
- 延滞・遅延:61日以上もしくは3ヵ月を超えて支払いが遅れた場合
- 債務整理:債務整理を行った場合
- 代位弁済:本人が返済不能であるため、代わりに保証会社や連帯保証人から支払いがあった場合
- 強制解約:本人に返済能力がないと判断、もしくは規約違反により強制解約となった場合
CICでは、自己破産以外の債務整理は異動情報として登録されませんが、債務整理の手続きによって発生する延滞や代位弁済が異動情報として登録されるなど、いずれの債務整理であっても、個人信用情報機関に異動情報として登録される仕組みとなっています。
債務整理がクレジットカードに与える影響
自己破産や個人再生は全ての借金が対象であり、クレジットカードも含まれますが、任意整理、特別調停では対象とする借金を選択できます。
クレジットカードはよく使うため対象から外したい人もいるのではないでしょうか。
では、債務整理するとクレジットカードにどんな影響が出るのか、これから詳しく解説していきます。
債務整理の対象となるクレジットカードは使えなくなる
クレジットカードの規約の中で、債務整理となった場合は利用額全額を直ちに支払う旨、支払いを怠った場合は強制解約となる旨が定められています。
従って、自己破産や個人再生の場合は当然のこと、任意整理、特定調停でも債務整理の対象となったクレジットカードは使用停止、最終的には強制解約の措置が取られることが殆どです。
もちろん債務整理の前にクレジットカードの支払いが遅れている場合は、その時点で使用停止の措置が取られていることがあります。
任意整理、特別調停で対象外のクレジットカードもいずれ使えなくなる可能性が高い
任意整理、特別調停で対象外のクレジットカードは、基本的にこれまで通り使用できます。
しかし、クレジットカード会社は、利用中のクレジットカード利用者に対し途上与信という信用調査を行います。
途上与信では、これまでのクレジットカードの利用状況と併せて個人信用情報機関で他社借入状況の確認も行われます。
つまり、任意整理、特別調停で対象外となったクレジットカード会社にも、途上与信によって他社の借入を債務整理した事実を知られてしまい、使用停止措置が取られる可能性があります。
未使用のクレジットカードも同様に使用できなくなる可能性がある
使用していないクレジットカードは、そもそも債務整理の対象になっていません。従って、債務整理を行ってすぐは使用できますが、やはり途上与信で使用停止となる可能性が高いです。
債務整理後にクレジットカードを作る上での注意点
債務整理を行うと5~10年は個人信用情報機関に登録されるため、クレジットカードを申込んでも審査で落とされる可能性は高いです。
では、債務整理後にどのような点に注意すればクレジットカードを作ることができるのか、これから解説していきます。
個人信用情報機関から情報が消えるまで待つ
個人信用情報機関で登録されている間は、クレジットカードを作ることはまずできません。
従って、クレジットカードの作れるようになるには、個人信用情報が消えるまで待つ必要があります。その間は、家族カードやデビットカードなどで対応しなければなりません。
個人信用情報は取り寄せることが出来ますから、事前に異動情報が消えているか確認してから申し込みましょう。
個人信用情報が消えても作れないケースもある
個人信用情報が消えても、クレジットカードが作れないことがあります。
その大きな要因として、社内ブラックに引っ掛かった場合、スーパーホワイトである場合、短期間で複数申し込みの場合が考えられます。
社内ブラック
クレジットカード会社を始め各金融機関の多くは自社の取引履歴を保管しており、その情報を審査に利用することがあります。
特に社内ブラックと言われる過去の延滞や債務整理の情報は、個人信用情報が消えても、社内の取引履歴からは消えていないことがあり、クレジットカードの審査で落とされる要因となることがあります。
従って、債務整理を行ったクレジットカード会社で申し込むことは控えるようにしましょう。
スーパーホワイト
債務整理をすると、5~10年間借り入れができなくなります。
つまり、その間新たに個人信用情報機関に登録される情報がないため、債務整理の情報が消えた時点では個人信用情報機関に情報が全く登録されていない「スーパーホワイト」の状態となります。
言い換えれば、個人信用情報機関に登録されている情報がないということは、過去に債務整理を行った可能性があると考えることもでき、審査で落ちる要因となることがあります。
スーパーホワイトを回避するために、携帯電話の端末や家電製品の分割払いなどを活用し、実績を作りましょう。
短期間で複数の申し込み
債務整理に限った話ではなく、短期間で複数の借入申込は「申込ブラック」として審査で落ちる要因となります。
個人信用情報機関には申し込みの事実も登録されるため、短期間で複数の申し込んだことはバレてしまいます。
特に同時申し込みは決してしないようにしましょう。
債務整理は借金問題の最後の手段、それだけに後々の影響も大きい
債務整理は、合法的に借金問題を解決できる最後の手段だけあってその効果は絶大です。
しかし一方で、債務整理の影響を受けることになり、特に改めてクレジットカードを作れるようになるには長期間を必要とします。
債務整理をする際には、長期間クレジットカードのない生活を送る覚悟を持つようにして下さい。